【インタビュー】中古Galaxyデバイスはいかにして新機種の重要部品になるのか?Samsungのサーキュラー・バッテリー・サプライチェーンの舞台裏
『中古のスマートフォンが新品デバイスの一部になるとしたら?』
これまではひとつの想像に過ぎなかったこのアイデアが、サムスン電子(韓国本社、以下Samsung)の「サーキュラー・バッテリー・サプライチェーン」によって現実のものとなりました。これは、使用済みのSamsung Galaxyのバッテリーから主要素材を回収し、再利用する取り組みです。このクローズドループの「バッテリー・リサイクルシステム」は Samsungのフラッグシップ製品で初めてSamsung Galaxy S25に適用されました。
Samsung Newsroomでは、Global Environment, Health and Safety (EHS) Office Circular Economy LabのYoungmin Kim氏と、Mobile eXperience(MX)事業部Battery GroupのSangcheul Lee氏に、このプロジェクトの背景と影響についてインタビューしました。
中古Samsung Galaxyデバイスが、貴重な資源として生まれ変わる
Samsungのベトナムの生産拠点では、毎年約200トンの廃バッテリーが回収されています。適切なリサイクルインフラが整っている国では、こうした使用済みバッテリーを電気自動車などに再利用できますが、ベトナムにはその手段がありませんでした。そのため、Samsungは持続可能なソリューションの必要性を認識し、この課題に取り組むことにしました。
「ベトナム工場は、製造工程での不良品や、米国で下取りされたSamsung Galaxyデバイスの修理に伴って回収されるバッテリーなど、廃バッテリーが最も多い工場のひとつです。私たちは、これらの資源をリサイクルし、再利用可能なシステムを構築することを目標にしていました。」とYoungmin Kim氏は語りました。
Samsungは、ベトナムにおける廃バッテリーの効率的なリサイクルプロセスを確立するため、複数の企業と連携し、コバルト抽出施設と近隣諸国のバッテリー生産ラインを結ぶ資源循環システムを構築しました。
Youngmin Kim氏は「Samsung Galaxy S24シリーズでは、外部からリサイクルコバルトを調達していましたが、Samsung Galaxy S25では、使用済みの廃バッテリーから直接コバルトを回収する完全なクローズドループのリサイクルシステムを導入しました。」と語ります。
回収された廃バッテリーは高純度のコバルトに精製され、バッテリー生産ラインに再供給されることで、Samsung Galaxy S25のバッテリーに組み込まれます。
このプロセスにより、使用済みのSamsung Galaxyから生まれる電子廃棄物を、価値ある資源へと転換することで、持続可能な循環型経済の実現に向けた取り組みをさらに加速しています。
「サーキュラー・バッテリー・サプライチェーン」は、使用済みのSamsung Galaxyデバイスの回収から始まります。その後、バッテリーの分解および放電処理が行われ、バッテリーは粉砕されて「ブラックマス」と呼ばれる微細な粉末状の物質へと処理されます。
この「ブラックマス」からコバルトを精製し、それを正極材の製造に使用することで、正極材は「Samsung Galaxy S25シリーズ」のバッテリーの主要構成要素として再利用されます。
コバルトの無限のリサイクル性
コバルトは、スマートフォンのリチウムイオンバッテリーの性能と安定性を支える重要な素材です。リチウムが電子の移動を担う一方で、コバルトはその動きを支え、バッテリーの最適な動作を保証します。
「コバルトはバッテリーの使用によって劣化することがないため、理論上、何度でもリサイクル可能です。再利用されたコバルトと新たに採掘されたコバルトの品質はほぼ同等で、製造時に見分けがつかないほどです。」とSangcheul Lee氏は語りました。
つまり、コバルトが含まれるGalaxyデバイスは、製造年に関係なくリサイクル可能ということです。
Sangcheul Lee氏は「高純度コバルトの抽出には高度な技術が不可欠です。私たちはこのサプライチェーンを通じて、廃バッテリーから90%以上のコバルトを回収し、再利用することに成功しました。」と語りました。
「Samsung Galaxy S25シリーズ」のバッテリーに使用されているコバルトのうち、約半分はリサイクルされたものです。これは、Samsungが高品質を維持しながら、環境負荷の低減に取り組んでいることを象徴しています。
信頼性と効率性を両立する循環型サプライチェーン
しかし、バッテリーには世界的に厳格な安全・環境規制を満たす必要があるため、この循環型システムの確立は容易ではありませんでした。
「多くのパートナー企業と連携し、何度も複雑な手続きを踏まなくてはなりませんでした。例えば、輸送中の火災リスクを抑えるためにバッテリーを粉砕する必要があったり、環境規制の遵守を示すために必要な証明書の取得にもかなりの時間がかかりましたが、ようやくSamsung Galaxy S25シリーズへの導入が実現しました。」と、Sangcheul Lee氏は語ります。
Samsungの進化し続ける循環型経済への挑戦
続けてSangcheul Lee氏は「Galaxy Unpackedイベントで私たちの取り組むサプライチェーンが紹介された時は、大きな達成感がありました。今後はリチウムなど他の素材にもリサイクル対象を広げ、より持続可能なバッテリーの開発を進めていきます。たとえば、半導体製造で不要になったウェハートレー(半導体の基板であるウェーハを安全に保管・搬送するための専用トレー)を、サイドキーや音量キーのプラスチック部品に再利用するなど、他製品でも循環型プロジェクトを広げています。」と語りました。
Samsungはこのサプライチェーンを通じて、クローズドループの「バッテリー・リサイクルシステム」の確立に成功し、2022年の環境戦略で打ち出したビジョンを「Galaxy S25シリーズ」で現実のものとしました。この取り組みは、持続可能な未来に向けたSamsungの次なるイノベーションの礎を築いています。
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