サムスン電子副社長 Byung-Duk Yang(ヤン・ビョンドク) 来日イベントレポート 開発責任者が語る「Samsungの折りたたみ技術革新」
最新Samsung Galaxy Zシリーズを支える技術力と日本企業との協業による「Flex Titanium」開発秘話を初公開
サムスン電子ジャパン株式会社は、「Samsung Galaxy Z Fold8 Ultra|Fold8|Flip8」の国内発売を記念し、最新折りたたみスマートフォンに関する取材インタビュー会を開催しました。当日は、Samsung Galaxyの技術開発を率いる責任者、サムスン電子 副社長 / 副チーム長Core Component Technology Team Byung-Duk Yang(ヤン・ビョンドク)が来日し、Samsungが長年にわたり培ってきた折りたたみスマートフォンの開発思想と、最新モデルに初搭載した「Flex Titanium」技術の開発背景、日本企業との協業について語りました。

■7世代にわたるユーザーインサイトから導き出した「理想的な折りたたみ」を実現
Samsungは2019年に初代「Galaxy Fold」を発表以来、複数世代にわたり技術を発展させ、より薄く、軽く、堅牢で実用的な折りたたみスマートフォンを追及してきました。それはディスプレイ や ヒンジ、バッテリー、放熱設計はもちろん、全体的な使い勝手までに至るまで、絶えず磨き上げてきました。こうした進化は、Samsung Galaxyにとどまらず、折りたたみスマートフォン市場全体の発展を牽引していると自負しています。
7世代にわたるSamsung Galaxyの折りたたみ技術革新を通じて導き出したSamsungの答えは、「理想的な折りたたみは1つの形だけでは定義できない」ということです。大画面で生産性を高めたい、コンテンツにより深く没入して楽しみたい、コンパクトな端末で自分らしいスタイルを表現したいなど、ユーザーが求める体験は多様です。Samsungは、これら7世代の経験を経て導き出した「理想的な折りたたみ」を実現するため、「より大きく、没入感のあるディスプレイ体験」「より薄く、軽く、それでいてさらに強力な耐久性」「妥協のないUltraレベルのパフォーマンス」という3つの中核的な技術革新を追求し、ユーザーが満足できる完成された体験として3つの異なるモデルを展開しました。
■異なるニーズに応える3つのフォームファクター
今作の折りたたみスマートフォン「Samsung Galaxy Z Fold8 Ultra」は、大画面とAI機能を組み合わせ、操作性と生産性を最大化させた最もパワフルなモデルです。「Samsung Galaxy Z Fold8」は、日常の様々なコンテンツやエンターテイメントをより高い没入感で楽しめるよう設計され、そして「Samsung Galaxy Z Flip8」は、コンパクトでスタイリッシュでありながら、自分らしい個性を表現できるAIネイティブなモデルです。多様なライフスタイルとGalaxy AIの活用シーンに合わせて設計された、これまでで最も完成度の高いSamsung Galaxy Zシリーズのラインナップとなりました。

左から「Samsung Galaxy Z Fold8 Ultra」「Samsung Galaxy Z Fold8」「Samsung Galaxy Z Flip8」 「Samsung Galaxy Watch Ultra2」「Samsung Galaxy Watch9」
■素材から体験価値までを最適化する「エンドツーエンドの技術革新」
3つの折りたたみの体験価値を上げるためには単にサイズや形、デザインを変えるだけでは不十分です。折りたたみスマートフォンはディスプレイ構造、ヒンジ、バッテリー、放熱システム、内部構造などの主要部品が密接に相互影響します。例えばディスプレイは端末の厚さや内部スペースに影響し、ヒンジは耐久性だけでなく端末の開閉時の感覚にも関わります。そこで、Samsungは単に個々の部品を薄型化・高性能化するのではなく、素材とディスプレイ構造、ヒンジ、バッテリー、放熱システム、本体内部構造に至るまで製品全体を一貫してシステムレベルで見直し、素材から体験価値まで包括した「エンドツーエンドの技術革新」を重視しました。
■ディスプレイ構造の革新「Flex Titanium」技術を新開発
今回の「Samsung Galaxy Zシリーズ」において、最も重要な役割を担ったのが新技術「Flex Titanium」です。デバイスの薄型化を実現するためには、ディスプレイを保護・支持しながら折り曲げに必要な柔軟性、長期間の使用に耐える強度と耐久性を両立させなくてはなりません。Samsungは7世代にわたる開発で実使用データや、衝撃テスト、サービスデータ、検証結果などを分析し、より薄い折りたたみスマートフォンを実現するために必要な素材と構造を改めて見直すとともに、折り目の長期的な変形を抑え、復元力を高める方法を見出しました。
そこで着目した素材が「チタン」です。チタンは強度に優れ、構造的に安定しており、繰り返し使用しても変形しにくい、非常に魅力的な素材です。航空宇宙のような過酷な環境でも広く使用されるほど、その性能は実証されています。
しかし、素材を選ぶだけでは不十分で、本当の課題はチタンの特性である強さをそのまま維持しながら、薄く加工し、曲げたり、広げたりできる柔軟性を持たせることでした。Samsungが実現した「Flex Titanium」技術はチタンプレートとチタン合金フィルムという2つの素材を組み合わせることで、この課題を解決しました。
- チタンプレート:ディスプレイ下部で主要な支持構造を担い、圧力と衝撃を吸収。グレード4チタンの精密構造を適用し、強度を維持し折りたたみに必要な柔軟性を確保する。下部の大きい穴を形成するウェットエッチングと、上部の微細パターンを形成するレーザーカッティングを組み合わせたハイブリッド製造工程により、折り曲げ部の格子構造をさらに精密に仕上げた。
- チタン合金フィルム:強度と柔軟性のバランスを考慮し、バナジウム、アルミニウム、クロムなどを含むチタン合金を採用。超薄型加工と熱処理により、人の髪の毛の約3分の1の薄さを実現しながらも、長期使用に耐えうる耐久性を確保。
本技術の開発においては、ユーザーフィードバックに基づいたイージーオープン構造の実現にも注力しました。デバイスの薄型化に伴い「開きにくい」という声があったことから、ヒンジやマグネット構造、ディスプレイの張力を精密に調整し、さらに折り曲げ部の端に微細な溝を設けることで、ユーザーが自然な動作でデバイスを開けるよう設計しました。単に薄さを追求するのではなく、スリムなフォームファクターとよりスムーズな開閉体験を両立させた点が今回の開発の重要なポイントです。

こうして「Flex Titanium」技術は、以下のようなユーザー体験を実現します。
- より没入感のあるディスプレイ体験:平坦な画面、改善した折り目、新採用の反射防止コーティングにより、没入感のある画面体験を提供。
- より薄く、軽いデザイン:モジュールの薄型化により、「Samsung Galaxy Z Fold8 Ultra」で厚さ約1mm(世界で最も薄い折りたたみ)、「Samsung Galaxy Z Fold8」で重量約201g(世界で最も軽い折りたたみ)を実現。
- Ultraレベルのパフォーマンス:ディスプレイモジュールの厚さを10%削減して内部空間をさらに効率的に確保したことで、より大きなバッテリーと向上した放熱設計の搭載が可能となり、妥協のないパフォーマンスを実現。
■「Flex Titanium」技術開発の鍵を握ったのは「日本企業」との協業
ヤンは今回のプロジェクトについて、初代Galaxy Foldから開発に携わってきた自身の経験の中でも「最も困難で、最も革新的なプロジェクトだった」と振り返りました。
「Samsungはシミュレーションやユーザー体験の分析から、次世代の折りたたみスマートフォンに必要な柔軟性と耐久性の目標値を設定しました。その両方を満たす素材を世界中で検討した結果、辿り着いたのがチタンでした。しかし、チタンを採用するだけでは十分ではありません。求める強度を維持しながら、折りたたみスマートフォンに搭載できるほど薄く加工し、さらに均一で安定した品質を実現する必要がありました。世界中のチタン関連企業と議論を重ねる中で、Samsungが求める水準の素材と加工技術を実現できたのが日本企業でした。そこから日本企業との緊密な協議が始まりましたが、開発は決して順調なものではありませんでした。何度もプロジェクトが頓挫しかけるほど困難な局面に直面したことから、社内では、映画『プライベート・ライアン』になぞらえ、『プライベート・ライアン プロジェクト』と呼ばれていたほどです。それでも日本企業とともに一つひとつ課題を乗り越えた結果、私たちが目指していた技術革新を実現することができました。その感謝の気持ちを、この場でもお伝えしたいと思います」。
■バッテリーおよび充電システムの技術革新
折りたたみスマートフォンの薄型化において、もうひとつ大きな技術的課題となるのがバッテリーです。端末内部の限られたスペースで、より長い使用時間と高速充電を実現しながら、安全性や長期使用時の安定性を維持する必要があります。
「Samsung Galaxy Z Fold8 Ultra」では、薄型デザインを維持しつつ、バッテリー容量5,000mAhを実現しました。これは大きなバッテリーをただ搭載すれば良いだけでなく、バッテリーシステム全体を再設計する必要がありました。そこで、エネルギー密度向上のため新たに「シリコンカーボン負極材」の導入を決定しました。シリコンカーボンの特性に合わせ、負極への薄いカーボンコーティングを適用し、シリコンカーボン粒子の反応性を低減して膨張を制御。正極へのコーティング・ドーピングを採用し、より高い電圧でも構造を維持できるようにしました。そして、電解壁には、シリコン表面を形成する添加剤を使用、シリコンの反応性と膨調を抑え、長期的なセルの安定性を確保しました。最後にセパレーターは抗多項性素材で強度と耐熱を維持しながら、イオン移動性を改善しています。このように、セルシステム全体を調整することで、高いバッテリー容量と信頼できる性能を実現しました。
さらに、「Samsung Galaxy Z Fold8 Ultra」および「Samsung Galaxy Z Fold8」では、折りたたみシリーズ初となる「45W超急速充電」を採用。もちろん、充電速度だけを重要視するのではなく、製品ごとに異なるバッテリー構造とフォームファクターに合わせて充電システムを最適化し、より高速に充電しながらも発熱を効果的に抑制することで長期間にわたり安定した性能を維持できるよう設計しました。
各製品に合わせて、バッテリーシステムから充電技術まで最適化を行った結果、3モデルのうちどの製品を選んでも、それぞれの製品に最も適した快適なバッテリー体験を提供します。

■実使用環境を想定した、100種類以上の信頼性テスト
Samsungは、ユーザーが毎日安心して使用できるよう、完成した製品全体に対して100種類以上の信頼性テストを実施しています。テストには落下、繰り返しの折りたたみと展開、圧力、湿気、異物混入など日常で起こり得る様々な条件が含まれています。単なる試験合格にどまらず、実際の使用環境でデバイスがどのように動作するかを確認することを重視しています。
【Byung-Duk Yang(ヤン・ビョンドク)コメント】

私は初代からこれまでずっと折りたたみスマートフォンの開発に携わってきましたが、今回のプロジェクトが一番困難で一番革新的でした。技術革新のすべての出発点はユーザーへの理解です。ユーザーが折りたたみスマートフォンをどのように使用し、何を求めているのかというインサイトが素材の技術革新につながり、「Flex Titanium」のような新しい技術を生み出しました。そして、こうした技術革新が再びユーザー体験を改善する設計へとつながり、「より大きく、没入感のあるディスプレイ体験」「より薄く、軽く、それでいてさらに強力な耐久性」「妥協のないUltraレベルのパフォーマンス」といった3つの完成された体験を提供できるようになりました。Samsungは、これからも折りたたみ技術の新たなスタンダードを築いていきます。
【登壇者について】
サムスン電子 副社長 / 副チーム長Component Technology Team
Byung-Duk Yang(ヤン・ビョンドク)

2018年に同社へ入社以来、材料・パネルアーキテクチャ・機構設計・駆動回路・システム統合に至るまで、モバイルディスプレイ技術の進化を先導。
同氏は、折りたたみディスプレイの基本設計を構築し、実用化を牽引。初代折りたたみ端末に採用された格子状金属構造(Lattice Metal Structure)、超薄型ガラス(Ultra-Thin Glass:UTG)、カバー画面、画面下カメラ(Under-Display Camera:UDC)技術、およびEMRペン入力など、業界初となる数々の技術を実現。
これらの革新は耐久性と信頼性を備えた現在の業界基準となる折りたたみディスプレイ設計の基盤を築き、新たな折りたたみディスプレイ時代を切り開いた。
また、Video Hybrid Modeを主導し、業界横断の協業を通じてMIPIDSI規格の一部として標準化を実現。この技術により、大幅な電力効率とユーザー体験の向上を実現した。
さらに、スマートフォンとして世界初となる内蔵型のプライバシーディスプレイ(Built-in Privacy Display)を考案・実用化し、ディスプレイ設計に新たなカテゴリを創出。この技術は「Samsung Galaxy S26 Ultra」で製品化されている。
2026年5月には、SID(Society for Information Display)シンポジウムにおいてSID Special Recognition Awardを受賞。これは、サムスン電子MX(Mobile eXperience)事業部として初の受賞という栄誉ある成果となった。
折りたたみスマホならSamsung Galaxy
【Samsung Galaxy Z Fold8 Ultra|Fold8|Flip8】

Samsung8世代目の折りたたみスマートフォン。パスポートサイズの「Samsung Galaxy Z Fold8」を新たなラインナップに加え、Ultra級に極めた生産性、没入感あふれる体験、そして自己表現を楽しむという、3つの異なる折りたたみ体験を提供すべく、3タイプの折りたたみスマートフォンを8月7日より国内発売を開始しました。
Samsung Galaxyの折りたたみスマートフォン史上最薄「Samsung Galaxy Z Fold8 Ultra」は、前作「Samsung Galaxy Z Fold7」からさらなる薄型化を成功。バッテリー容量も前モデルから600mAh増の5000mAhに向上したほか、画面の折り目もより目立ちにくく進化しました。さらに、超広角が5000万画素へと大幅にアップグレードされた3眼カメラは、明るさが約34%向上し、より高精細な撮影が可能です。
コンテンツに没入できる新しいカタチ「Samsung Galaxy Z Fold8」は、10:16のカバー画面と4:3のメインディスプレイを採用し、映画やSNS、マンガなどのコンテンツを画面いっぱいに楽しめるデザインへと刷新しました。Ultraモデル同様に2画面・3画面のマルチウィンドウに対応しており、本モデルでは横並びでの3画面表示も可能です。
「Samsung Galaxy Z Flip8」は、開口時6.1mm・約180gというSamsung Galaxy Z Flipシリーズ史上最薄・最軽量を実現。最新の「One UI9」に対応したことで、追加アプリなしでフレックスウィンドウ上にアプリトレイを表示できるようになりました。
さらに折りたたみ画面に最適化された「Galaxy AI」は会話から次のアクションを提案・大画面で並行操作できる「Now Nudge」やチッケムやソロアングルで人気の、特定の人物にフォーカスをした動画を作成できる新機能「マイファンカム」などを新搭載。日常のあらゆる場面で先回りするAIがあなたをサポートしてくれます。
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